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「ヴィオラ」がどんな楽器か、ご存知ですか？
名前を聞いただけではどんな楽器なのか、どんな音がするのか、あまりイメージが湧かない人も多いかもしれません。
ヴィオラは落ち着いた柔らかい音色を持つ楽器で、オーケストラやアンサンブルには欠かせない存在なのです。
今回は、そんなプロのヴィオラ奏者として活躍している加藤星南さんにお話を伺いました。
ヴィオラの魅力を知りたい人は、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
■加藤 星南（ヴィオラ奏者）
千葉県出身。桐朋学園大学卒業。現在、兵庫芸術文化センター管弦楽団コアメンバー。東京・春・音楽祭、PMF2022、2023に参加。現在、東京と関西を拠点にオーケストラ、室内楽、アーティストのサポートなど様々な活動をしている。
■聞き手：福島 未貴
フリーランスのライター・トロンボーン奏者。武蔵野音楽大学を卒業後、現在は記事執筆の傍ら演奏活動や音楽レッスンの仕事にも携わっている。音楽を専門的に学び活動している演奏家ならではの視点から、音楽・演奏にまつわる情報や、演奏家の想いをお届け。
プロの楽団に所属する傍ら、地元の音楽発展にも貢献！
ーー 現在はプロ楽団にも所属されているとのことですが、改めて現在の音楽活動について、詳しく聞かせてください。
加藤さん：
現在は兵庫芸術文化センター管弦楽団のコアメンバーとして在籍し、コンサートに出演しています。
地元は千葉なので、オーケストラのお仕事がお休みのときには関東に戻ってオーケストラに客演として参加したり、母校の中学校で芸術鑑賞会をやったり、高齢者施設でも演奏をしたり……。
オーケストラの拠点である関西と、実家がある関東を行き来しながら音楽活動をしています。
移動距離や体力面は大変に感じることもありますが、地元の音楽発展にも貢献・応援したいという気持ちが強いです。
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加藤さん：
オーケストラ以外に、室内楽の演奏もやっています。
ピアニスト・ヴァイオリニストとのトリオで演奏することが多く、クラシック音楽以外にもJPOPや映画音楽をアレンジして演奏していますね。
過去には、トリオで千葉県鎌ケ谷市の「きらり！アーティスト発掘プロジェクト」に応募して最優秀賞に選ばれ、一日警察署長として警察の制服を着て演奏をしたこともありました。
ハーモニーやリズムで演奏を支える楽しみを。ヴァイオリンからヴィオラに転向した理由とは？
ーー ヴァイオリンと比べて、なかなか最初からヴィオラを手にする人は少ない印象があります。加藤さんはどのようなきっかけで、ヴィオラを始められたのですか？
加藤さん：
最初は、ヴィオラではなくヴァイオリンから始めたんです。習いごととしてヴァイオリンをやっていて、音楽大学にもヴァイオリン専攻で入りました。
私が通っていた桐朋学園大学はちょっと特殊で、「ダブル専攻」という仕組みがあったんです。1、2年生のあいだは副専攻としてヴィオラをやって、3年生からはダブル専攻としてヴィオラをとっていた……という感じですね。音大在学時から「卒業したら絶対にヴィオラ1本でいこう」と決めていました。
加藤さん：
初めてヴィオラを演奏したのは、室内楽・オーケストラでした。ヴィオラ専攻は少ないので人数が足りないことが多く、ヴァイオリン専攻が持ち替えて弾くことが多いんです。
それがきっかけでヴィオラの音に魅了されて。
ヴィオラはメロディよりもハーモニーを奏でたり、リズムを刻んだりといった役割が多いのですが、それもすごく楽しく感じました。
もともとアンサンブルやオーケストラなど、人と一緒に演奏することが好きだったので、ヴィオラの役割が自分に合っていると思いましたね。
パーティーや子ども向けコンサートに◎ アンサンブルの中でより輝くヴィオラの魅力
ーー ヴィオラというと、ソロよりもアンサンブルのイメージがあります。ヴィオラを含むおすすめの編成や、ヴィオラの音を取り入れるのにおすすめのシーンをぜひ教えてください！
加藤さん：
ヴァイオリンやチェロと一緒に演奏する弦楽四重奏や、ピアニスト・ヴァイオリニストと一緒にトリオ（三重奏）で、よく演奏していますね。
ヴィオラソロももちろん可能ですが、何人かのグループで演奏させていただくことが多いです。
ヴィオラ単体よりも、弦楽四重奏やピアノを含んだトリオだと、楽器の種類が多いぶんいろいろな音色を楽しめます。
そのため、結婚式や企業パーティーなどの華やかなシーンや、お子さま向けのコンサートにもよく合うと思います。
特に幼稚園でのコンサートなど、小さなお子さまにとっては、複数の楽器を見たり音を聴いたりできると楽しいですよね。
息の合った演奏が、感動を倍増！企画から演奏までをつくり上げたワンコインコンサートの思い出
ーー 普段から大きなホールでのオーケストラ演奏や少人数での室内楽など、さまざまな編成・シーンで演奏をされておりますが、なかでも特に思い出に残っているコンサートはありますか？
加藤さん：
地元のコンサートホールと連携して、ピアニスト・ヴァイオリニストの方と一緒にワンコインコンサートをやらせていただいたことが、印象に残っていますね。
そのときは「演奏ジャンルも自由でいいよ」といっていただいたので、プログラム内容なども全て自分たちで企画させていただいたんです。
2部構成で、前半ではウェスト・サイド・ストーリーなどの映画音楽を私が編曲して演奏し、後半はアルゼンチン出身のピアソラという作曲家を特集して、有名なリベルタンゴなどを演奏しました。
コンサート終演後、ロビーでお客さまのお見送りをさせていただいたのですが、そのときに「3人で息ぴったりだったよ！」と言っていただけたことが、すごく思い出に残っています。
もちろん、私個人の音色を褒めていただくこともすごく嬉しいのですが、アンサンブル全体や、コンサート全体のことを褒めてもらえたり喜んでもらえるのは、さらに嬉しい気持ちになりますね。
曲選びから演出まで。幅広い年代に音楽を届ける工夫
ーー ご自身でコンサート内容を企画されたり、プログラムを組み立てていくことも多いかと思いますが、どんなことを大切にされていますか？
加藤さん：
選曲については、お客さまの年代に合わせるようにしています。
たとえば小さなお子さま向けだと、ディズニーやジブリの曲をやったり、小さい子でも聴きやすいクラシック音楽を取り入れてみたり。
高齢者施設での演奏の際には歌謡曲や演歌、童謡などをチョイスしています。
「テレビでやっていましたよね」「ちょうど金曜ロードショーで流れてましたね」といったトークも絡めながら演奏しています。
加藤さん：
演奏以外の演出も工夫していますね。
クイズ形式でコンサートを進めたり、写真や資料を使って視覚的にも楽しめるような内容を考えています。
お子さまにはちょっとした音楽教育要素を兼ねて、大人向けには豆知識でより音楽を楽しむ……といったイメージです。
じっと聴くだけでなく、目で見たり参加したりして楽しめるようなコンサートをつくっています。
二拠点を行き来しながら届ける、ヴィオラの音色と魅力
オーケストラでの演奏はもちろん、地元のコンサートや幼稚園・高齢者施設での演奏まで、さまざまな場所で音楽を届けている加藤さん。
演奏はもちろん、選曲やプログラム・演出まで、どの現場でも「どうしたら楽しんでもらえるか」と真剣に考えている様子が伝わってきました。
ヴィオラの温かくて優しい音色は、実はあらゆるシーンによく馴染みます。
生演奏を検討している方は、ヴィオラの音色もぜひ選択肢に入れてみてくださいね。
＜加藤星南さんプロフィール＞