トピックス 声楽家から、“歌うハープ奏者”へ。弾き歌いスタイルで音楽を届けるアイリッシュハープ奏者・くららさん

声楽家から、“歌うハープ奏者”へ。弾き歌いスタイルで音楽を届けるアイリッシュハープ奏者・くららさん

2025/07/16
くららさん記事サムネイル

天使や女神様などと一緒に、絵画にもよく描かれる楽器、ハープ。
優しくて、幻想的で、少し特別な楽器——そんな印象を持っている人も多いかもしれません。

今回注目したのは、そんなハープを弾きながら歌を届ける“弾き歌い”スタイルで、さまざまな現場に寄り添う演奏を届けているくららさん。
BGM演奏やイベント出演、施設での演奏など柔軟な対応でお客さまの希望に応えています。

くららさんが弾き歌いのスタイルに行き着いた経緯や、ハープという楽器の魅力をたっぷりと語っていただきました。

■くらら(ハープ奏者・声楽家)
オーストリア国立グラーツ音楽・演劇大学卒業後、ドイツやイタリアでも研鑽を積む。万里の長城杯国際音楽コンクール、アジア国際音楽オーディションなどで入賞。声楽・合唱・ボーカルやハープの指導も行い、あおい音楽コンクールで指導者賞を受賞。2022年に音楽健康指導士準2級を取得し、2023年にはおとつぶハープガイド講習を受講。クラシックやポップス、民族音楽、ヨーデルまで幅広いレパートリーを持ち、ソロや弾き語り、アンサンブルで演奏活動を行うほか、楽譜のオンライン販売や体験型コンサートも開催している。

■聞き手:福島 未貴
フリーランスのライター・トロンボーン奏者。武蔵野音楽大学を卒業後、現在は記事執筆の傍ら演奏活動や音楽レッスンの仕事にも携わっている。音楽を専門的に学び活動している演奏家ならではの視点から、音楽・演奏にまつわる情報や、演奏家の想いをお届け。

多彩な現場を、ハープとともに。弾き歌いにBGMまで自在にこなすハープ奏者

ーー ソロやアンサンブル、ハープの弾き歌いなど、さまざまな形態で演奏をされていますね。どのような活動をされているのか、改めて詳しく教えてください。


くららさん:
ハープ奏者兼声楽家として活動しています。

コンサート活動をはじめ、出張演奏にうかがったり飲食店でのBGM演奏を担当したり、演奏シーンはさまざまですね。

幼稚園や保育園、高齢者施設で演奏をさせていただく機会も多いです。最近は野外でのお祭りで弾いたり、屋形船の中で演奏したりもしました。

ハープにもいくつか種類があるのですが、私が演奏しているのは「アイリッシュハープ」という、アイルランドで発展したハープです。

オーケストラの中で演奏されるグランドハープとは異なる楽器で、比較的小柄で軽量な楽器なんです。
持ち運びもできるので、ハープとともにあらゆる場所へ演奏に行かせていただいています。

ハープの弾き歌いをするくららさん

くららさん:
私の場合は、ハープを弾きながら歌う「弾き歌い」の演奏もよくおこなっています。
ジャンルはクラシック音楽からポップス、民族音楽までさまざまです。

年代問わず多くのお客さまに楽しんでもらえるように、レパートリーはなるべく多く取り揃えています。


「ハープを弾きながら歌いたい」。子どものころからの夢を実現

ーー くららさんは歌も歌われるとのことですが、どのような経緯で「弾き歌い」のスタイルになったのでしょうか?


くららさん:
実は、私はもともとは声楽家なんです。声楽が専門で、ハープは大人になってからはじめました。

あらゆる場所で歌を歌うなかで、やっぱりカラオケ音源ではなく「伴奏も生の音を聴いてほしい」と思うことが多くなっていって。

ピアノで伴奏を弾きながら歌うこともあるのですが、小さい頃からハープにずっと憧れがあったんですよね。

ハープの弾き歌いをするくららさん

くららさん:
ハープは見た目も素敵で美しくて……「ハープを弾きながら歌ってみたい」という夢が、自分のなかにありました。

「歌いながらハープを弾けるようになりたいんです!」とハープの先生の門を叩き、今の演奏スタイルになってからもう10年くらいになりますね。

ハープがなかったら、私の歌をこんなに聴いてもらえることはなかっただろうなと感じたことが、この10年でたくさんありました。

もちろん、ほかの演奏家に伴奏を弾いてもらって歌うこともありますが、弾き歌いだとより自由に伴奏ができます。それに、ハープの振動って、自分で演奏していてもとても心地のいいものなんですよ。

ただ、楽器の構造上ハープではどうしても演奏が難しい曲もあるので、その際には今もピアノを使います。民族音楽などはハープのほうが合うので、曲目によってハープとピアノを弾き分けていますね。


自宅に6台、目的別にハープを使い分け。楽器によって異なる音色</h2>

ーー 「ハープにもいくつか種類がある」とのことでしたが、たしかにくららさんの後ろに、いくつかハープが置いてあるのが見えます!何種類くらいを、どのように使い分けているのですか?

くららさん:
自宅には、小さなものも含めて計6台のハープがあります。

メインで使っているのは、低音が豊かになる楽器です。私が歌を歌うので、歌の伴奏として使うには、少し音域が広めで低い音も鳴らせる楽器のほうが合っています。

小さなハープはスペアとして持っていたり、ジブリ音楽など可愛らしい曲を弾くときに「ちょっとこちらの小さな方でも弾いてみますね」と、聴き比べをすることもあります。

お膝に乗るくらいのコンパクトなハープもあって、こちらは演奏体験をしていただく際に活用します。演奏体験は、皆さんにとても喜んでいただけますね。

くららさんの所有ハープ


楽器がない会場でも演奏可能◎ 癒やしを届けに、ハープとともに出張演奏

ーー ハープの演奏を生で聴いたことがある人は、そう多くないのではないかと思います。ハープは特にどのようなシーンにおすすめでしょうか?

くららさん:
一番は、常設の楽器がない会場ですね。
ピアノなどの楽器がなにもない会場でも、ハープは持ち運ぶことができるので、コンサートをおこなえます。

もしくは、演奏家をたくさん呼べないときにも、ハープはおすすめですね。
ハープ奏者1名でもコンサートが成立しますし、私の場合はひとりで弾いて歌うこともできるので、会場が手狭な場合でも安心です。

ハープを弾くくららさん

くららさん:
もう少し具体的なシチュエーションをあげると、病院や療育施設などにもハープはぴったりだと思います。

ハープは音色がとても優しい楽器です。人には聞こえない周波数の音が含まれているらしく、国によってはセラピーや医療の一環としてハープが用いられることもあるんですよ。
そのため、癒やされたい人が多い環境には適した楽器だと思います。

以前お子さま向けのコンサートで演奏したら、みんな気持ちよくなってぐっすり眠ってしまったこともありました。(笑)
そのくらい、リラクゼーションを味わえるのがハープの魅力ですね。


「ハープの音が聴きたくて来ました」。台風のなかでおこなったコンサートの思い出

ーー コンサート出演にBGM演奏など多彩に活動されていますが、特に思い出に残っているエピソードがあれば教えてください。

くららさん:
LiveDeliのお仕事で地域の交流館で演奏をさせていただいたことが、とても印象に残っています。その日はハープとフルートのデュオで演奏しました。

施設主催のイベントだったのですが、当日にちょうど台風が来てしまったんです。
施設の方も「こんなお天気ですが……」とおっしゃってくださり、そんななかでもイベントは開催することに決定しました。

もちろんイベントに来られなくなってしまったお客さまもいたのですが、悪天候にも関わらず想像以上にたくさんの方が来てくださったんです。

それだけでも嬉しかったのですが、終演後にお見送りをしている際に「今日は演奏をどうしても聴きたかったから、なにがなんでも行く!って決めて来ました」と言ってくださった方もいらっしゃいました。それがすごく嬉しかったですね。

台風の際のコンサートの記念写真

くららさん:
上皇后の美智子さまがハープを弾いていらっしゃることから、その日のお客さまのなかにもハープに憧れを持っている方が多かったんです。

お話を聞いていると「生のハープをぜひ聴きたいと思っていた」「フルートとの組み合わせがとてもよい。ゴールデンコンビだ」と、大変喜んでいただけました。

台風のなか会場へ来るだけでも大変だったでしょうに、私たち演奏家に優しいお言葉までかけてくださって、本当に心が温かくなりましたね。


「おまかせ」でも安心できるコンサートを。事前準備とコミュニケーションを大切に</h2>

ーー こうしてお話をうかがっていると、くららさんがお客さまに愛情を持って誠実に向き合っていることが伝わってきます。演奏をする際に、特に大切にしていることがあれば、ぜひお聞かせください。

くららさん:
演奏を聴いてくださるお客さまのことを考えながら、しっかりと準備をすることを心がけています。

曲目のリクエストがあればヒアリングをするのはもちろんですが、リクエストはなく「おまかせで」といわれた際にも、「こんな感じはいかがですか?」と事前に確認をするようにしていますね。

事前に準備できることはなるべくやって、それをお客さまにもお伝えすることで「ちゃんと準備してくれているんだな」という安心感にも繋がるのではないかと考えています。

演奏のクオリティや当日のやり取りも大切ですが、演奏する前からのコミュニケーションもしっかり取るように意識していますね。


ハープの音色で心癒される空間を、くららさんと一緒につくってみませんか?

くららさんのお話からは、ハープという楽器の魅力だけでなく、聴く人に寄り添いながら場にふさわしい音楽を届けようとする誠実な姿勢が伝わってきました。

演奏内容はもちろん、会場や雰囲気や当日の進行などにも気を配りながら、一つひとつの機会を大切にして演奏に臨まれています。そんなくららさんの姿勢は、依頼する側にとっても大きな安心感につながりますね。

「このイベントに合う音楽を相談しながら決めたい」
「ハープの生演奏で、癒やしの時間をつくりたい」

 そんな方は、ぜひ一度くららさんに相談してみてくださいね。

<くららさんプロフィール>

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