
日本の伝統楽器のひとつである、和太鼓。
神社やお祭りなどで演奏されるイメージの強い和太鼓ですが、時代とともに革新的な進化を遂げています。
今回は、そんな和太鼓の魅力を届けるべく、国内に留まらず海外でも活動を展開している和太鼓奏者・浅野聡太さんにお話をうかがいました。
“日本らしさ”を大切にしつつも和洋を融合させた新しいスタイルに挑戦し、次世代に文化を伝えていく浅野さん。どんな想いを持って演奏活動をしているのかを、たっぷりと語っていただきました。
■浅野 聡太(和太鼓奏者)
愛知県出身。 9歳より太鼓を始め、13歳から梅村幸生氏に和太鼓を師事する。2019年秋には音楽の殿堂と称されるカーネギーホールでの公演「Wind of Tsugaru 」に出演。 近年では、宮本亜門氏をはじめとする著名な審査員により「NEXTアーティスト」に選出される。
■聞き手:福島 未貴
フリーランスのライター・トロンボーン奏者。武蔵野音楽大学を卒業後、現在は記事執筆の傍ら演奏活動や音楽レッスンの仕事にも携わっている。音楽を専門的に学び活動している演奏家ならではの視点から、音楽・演奏にまつわる情報や、演奏家の想いをお届け。
ソニーミュージックレーベルからメジャーデビュー!国内外で太鼓の音を響かせる
ーー 国内外と多岐にわたってご活躍されているようですが、改めて浅野さんの現在の音楽活動について教えてください。
浅野さん:
プロの和太鼓奏者として活動をしており、日本国内だけでなく海外でも演奏を披露しています。
ソロ活動に加えて、いくつかユニットも組んでいます。そのうちのひとつが「Neo Japanesque(ネオジャパネスク)」という、名古屋を拠点とする和洋混成のバンドです。
このバンドは、2025年の1月にソニーミュージックレーベルからメジャーデビューを果たし、現在のメイン活動のひとつにもなっています。和太鼓や篠笛などの和楽器にドラム、キーボード、ギターなども掛け合わせて、今の時代に即した創作のような感じですね。

浅野さん:
対して、和洋折衷ではなく、一般的によく連想される「THE・和太鼓」といったイメージを大事にした演奏活動もおこなっています。
ほかには、ソロで演奏をする際にも和太鼓とシンバルを並べて演奏したりもしますね。実は中学生のころからドラムもやっていることもあり、音楽を追求するにあたって「なにか工夫できないかな?」と考えて、このスタイルを思いつきました。
現在は「Paiste Cymbals(パイステシンバル)」というスイスのシンバルメーカーのエンドーサーもさせていただいています。

打楽器は音楽のスポーツ!最初はあまり好きではなかった和太鼓に、少しずつのめり込んでいった学生時代
ーー ピアノやヴァイオリンに比べると、和太鼓を始めるきっかけは、あまりイメージがつかない人も多いかと思います。浅野さんはどのような経緯で和太鼓をはじめられたのですか?
浅野さん:
9歳のころ、地元・愛知県内のサークルに入ったのがきっかけですね。愛知県は高校の和太鼓部が盛んで、かつてはプロの太鼓チームもいたんです。
僕の祖母が和楽器が好きで「和太鼓やってみたらどう?」と、僕の母に伝えたらしくて。そこから母に連れられて太鼓サークルに行ったんですが、実は、当時の僕は太鼓の音があまり好きじゃなかったんですよ。(笑)
半ば引きずられるようにサークルに行ったのですが、実際に楽器に触れてみると、叩けばすぐに音が出るし、なにより「あれ、意外と気持ちいいじゃん!」と思いました。
浅野さん:
よく「打楽器は音楽のスポーツ」と言われますが、本当にそのとおりで。身体を動かして楽器を鳴らすことが、ある意味ストレス発散というか、スポーツと同じような爽快感があるというか……。そこからは、少しずつ太鼓にのめり込んでいきました。
和太鼓をはじめとする打楽器は見た目的にもパフォーマンス性が高いので、全身全霊で演奏する姿に「感動した」とコメントをくれるお客さまも多いです。
演奏をとおして、日本の風景を共有。“日本らしさ”を感じたいシーンに、和太鼓の音色を。
ーー 和太鼓をはじめとする和楽器の演奏が特に映えるシーンや、取り入れるのにおすすめのシーンをぜひ教えてください!
浅野さん:
やっぱり、日本らしさを感じたい・大切にしたいイベントに和楽器はぴったりですよね。たとえばお正月はもちろんですが、建国記念日とか夏休みとかもよいと思います。
和楽器はやはり日本らしさを感じられる楽器なので、僕自身も「日本の風景ってこうだよね」というイメージが届くように演奏させていただいています。
日本ならではの景色や風情を音で届けて、それをお客さまと共有できると嬉しいです。
浅野さん:
日本人として生まれたことだったり、海外の方も含めいろいろな人が日本に住んでいる環境があることだったり、そんな部分にアイデンティティを感じられるのが、和楽器の魅力だと思っています。
ぜひなにかの節目やハレの日のイベントで、和楽器の演奏を一緒に楽しんでみてほしいです。
結婚式で新郎とコラボ演奏!一生に一度の晴れの日に、和太鼓演奏で華を添える
ーー これまでさまざまなコンサートに出演されていると思いますが、特に印象に残っている演奏はどんなものがありますか?
浅野さん:
日本には「ハレの日」と「ケの日」がありますが、和太鼓はやはりお祭りごとに用いられるイメージもあり、ハレの日に演奏させていただくことが多いです。なかでも結婚式での演奏はすごく喜んでいただけるので、すごく印象に残っていますね。
特に思い出深いエピソードは、ご新郎と一緒に演奏をしたことです。
ご新郎が昔太鼓をやっていたらしく「一緒に演奏したい」とオファーをいただき、ソーラン節を一緒に叩きました。
ご新郎が喜んでくれたのはもちろんなのですが、それを見ていたご新婦もすごく嬉しそうな表情で。喜びが伝播している感覚があって、ご夫婦の笑顔に僕も心が満たされました。
ハレの日のなかでも、さらに特別ともいえる結婚式。一生に一度の日に華を添えられたというのは、本当に嬉しいことでしたね。
次の世代に和太鼓を伝えるために。伝統と革新の両面から、和太鼓の魅力を届けたい。
ーー 浅野さんが演奏活動をしていくうえで大切にしている想いがあれば、ぜひ聞かせてください。
浅野さん:
やはり「次の世代にどう残していくか」というのを、日々考えています。
実は和太鼓には種類があって、僕がやっているのは「創作和太鼓」というジャンルなんです。
古くから伝わる三宅太鼓や秩父屋台囃子などの伝統芸能や神社で演奏される太鼓とは異なり、創作和太鼓は「舞台芸能のためにつくられたジャンル」といった感じです。
とはいえ、そのあたりのジャンル云々に関わらず、和太鼓や和楽器という楽器そのものの文化は、後世にしっかり伝えていきたい。そのために、ジャンルの違いをお客さまにも説明したうえで、その地域の民謡や伝承曲を演奏することもあります。
ただ、伝統を重んじるものばかりだと、どうしても若い世代に文化が伝わっていかないのが悩みでもあります。
西洋の楽器と掛け合わせるなど、新しい要素や時代に合ったものを取り入れながら、和楽器に興味を持つお客さまの層を広げていくことが、自分の活動テーマでもありますね。
和太鼓が生み出す感動を、もっと多くの人へ
「日本らしさを音で届けたい」という想いのもと、国内外で活躍を続ける浅野聡太さん。
伝統を大切にしながらも、和太鼓に新たな要素を取り入れ、次世代へとその魅力を繋いでいく姿勢が印象的でした。
浅野さんの活動は、以下の公式ホームページやSNSでチェックできます。ぜひ浅野さんの奏でる和太鼓の音色に触れてみてくださいね!
<浅野聡太さんプロフィール>
プロフィールページ:https://livedeli.com/players/sota-asano
SNS:https://www.instagram.com/taiko_drummer_sota/