
皆さんは「和太鼓」と聞くと、どのようなイメージがありますか?
力強い音色、響き渡る振動、そして全身を使ったダイナミックな演奏──。
和太鼓は、日本の伝統を感じさせるだけでなく、その場にいる人々の心を揺さぶる楽器です。
和太鼓奏者の浅野聡太さんは、そんな和太鼓の魅力を世代や国境を超えて伝えるべく、国内外でさまざまな活動をしています。
結婚式やイベント、お祭りといったハレの日を、より印象深いものにする和太鼓の生演奏。浅野さんがつくり上げる和楽器コンサートの魅力や、そこに秘められたテーマをお聞きしました。
■浅野 聡太(和太鼓奏者)
愛知県出身。 9歳より太鼓を始め、13歳から梅村幸生氏に和太鼓を師事する。2019年秋には音楽の殿堂と称されるカーネギーホールでの公演「Wind of Tsugaru 」に出演。 近年では、宮本亜門氏をはじめとする著名な審査員により「NEXTアーティスト」に選出される。
■聞き手:福島 未貴
フリーランスのライター・トロンボーン奏者。武蔵野音楽大学を卒業後、現在は記事執筆の傍ら演奏活動や音楽レッスンの仕事にも携わっている。音楽を専門的に学び活動している演奏家ならではの視点から、音楽・演奏にまつわる情報や、演奏家の想いをお届け。
ソロからアンサンブルまで、幅広い演奏スタイルで活動中
ーー ソロ、アンサンブルなど多方面で活躍されていますが、主にどのようなシーンでの演奏が多いのでしょうか?
浅野さん:
ソロ活動のほかに、和楽器と西洋楽器の楽器を織り交ぜた「Neo Japanesque」というユニットなど、アンサンブルでの演奏も多くおこなっています。
日本国内でのコンサート・ライブはもちろん、韓国やアメリカ、ベトナムなど海外でツアー演奏をさせていただくこともありますね。実は直近も、ラオスで演奏する予定があります。
ーー すごい!世界各国で演奏されているのですね!
浅野さん:
ほかには、地方のイベントやお祭りでゲストとして出演させていただいたり、子ども向けにアウトリーチをおこなったり、結婚披露宴で演奏することもあります。
やはり和楽器はお祭りのイメージが強いので、いわゆる「ハレの日」に華を添え、盛り上げる役割で演奏させていただくことが多いですね。
迫力のあるパフォーマンスと、楽器を体験する楽しみの両面からアプローチ
ーー 和太鼓のコンサートには、どのようなお客さまがいらっしゃいますか?
浅野さん:
和太鼓に限らず、和楽器はやはり“日本の伝統文化”といったイメージが強いので、年齢層としては比較的高齢のお客さまが多いですね。
僕がやっている和太鼓は「創作和太鼓」といって、神社などで演奏されたり各地域に古くから根付いている伝統芸能とは、実はジャンルが違います。創作和太鼓は、舞台芸能のために昭和時代から発展していった、比較的新しいジャンルなんです。
そういった歴史的背景や文化の違いをお話したうえで、あえて創作和太鼓で各地域の伝承曲や民謡を演奏させていただくこともあります。

浅野さん:
和太鼓などの打楽器は、「音楽のスポーツ」とも呼ばれます。身体全身を使ってパフォーマンスをする楽器なので、その点もとても喜んでいただけますね。
「迫力ある全身全霊のパフォーマンスに感動した」と言ってもらえることも多く、とても嬉しく思っています。
また、高齢者の方だけではなく、子どもたちの前で演奏することもあります。
ーー 子どもたちからの、和太鼓演奏への反応はいかがですか?
浅野さん:
子どもたちには、太鼓を実際に叩かせてあげる体験型のコンサートをやることが多く、とても楽しんでもらえています。
いろいろな楽器のワークショップがあるなかで、太鼓は「音を鳴らす」という意味では、やはり一番簡単なんですよね。もちろん「カッコよく叩きたい!」となると少し難しいのですが、バチを持って太鼓の面を叩けば、誰でも音を鳴らせます。
まずは「音が出た」という体験をしてほしいので、自由に叩いてもらうこと、楽しんでもらうことを大切にしていますね。

ーー たしかに、管楽器など音を鳴らすだけでも難しい楽器もありますよね。和太鼓なら、音が出る喜びをダイレクトに共有できそうです!
浅野さん:
そうなんです。ただ、いきなり体験させるのではなく、最初は演奏を聴いてもらう時間も設けています。
どんな楽器かをまず知ってもらって、そのあと実際に体験してもらう。そうすることで、子どもたちの「カッコよく叩いてみたい!」という意欲も湧きますよね。気持ちの導線も意識したうえで、ワークショップを設計しています。
僕の活動テーマとして「和太鼓に興味を持つ人を広げたい」「若い世代に伝えたい」という想いがあるので、今後も子どもたちに向けたパフォーマンスは積極的におこなっていきたいですね。
“日本らしさ”を感じる衣装で、お祭りムードをさらに盛り上げる
ーー クラシック音楽のコンサートではドレスやタキシードといった衣装が主流ですが、和太鼓の場合はどのような衣装で演奏されるのですか?
浅野さん:
長半纏(ながはんてん)という、丈の長い法被のような衣装を着ることが多いです。
こういった衣装を着ているだけでも「なにかお祭りがあるのかな?」と感じてもらえるのも、和楽器演奏の面白いポイントかなと思っています。

演奏する前から「お、なにか始まるみたいだぞ」とワクワクした気持ちを醸成できますし、衣装もパフォーマンスの一部として、日本ならではの原風景を感じてもらえていると嬉しいです。
空気の振動まで伝わる和太鼓の生演奏で、ハレの日をもっと特別な思い出に
和太鼓の音は、ただ耳で聴くだけではなく、身体全体で感じるもの。浅野さんの演奏は、その力強さと美しさで、多くの人の心に残る体験を生み出しています。
イベントの華やかな演出として、また子どもたちに和楽器の魅力を伝える機会として。
特別な一日を、さらに忘れがたい思い出にする和太鼓の響き。ぜひその魅力を体感してみてくださいね!
<浅野聡太さんプロフィール>
プロフィールページ:https://livedeli.com/players/sota-asano
SNS:https://www.instagram.com/taiko_drummer_sota/